紙の街

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紙の街

 天を仰いでもまだ空は濃い紺色をしていたが、前の方に視線を移していくとそれは彩度を上げて青く、また光が通過する大気の厚みの変化から緑、黄、橙とグラデーションを示していた。風に散らされて千切れた様な雲はそれらの色を映したり影になって黒かったり、すでに白かったりと適当な様相をしていて、一つ思ったのはいつか見た星雲の写真とそっくりだという事。雲と称されるのも納得である。  私は昨晩も作業を行ったままここで眠ってしまったようで、もう一年も続けているのにまだ終わらないそれは一体いつになれば実を結ぶのだろうと思う。しかしまあ続ける他無いからして何度そんな思いをしてもただ精神の健康を害するばかりなのだ。文句を言っても仕方がないというやつなのだ。  良いことも対してないだろうに、なぜ人は文句を言うのだろう。  いや、違う、なぜ人は文句として口から突いて出てくる様な感情を労働に対し抱くのだろう。労 働の結果得られるものを本能的に求めるよりも労働を本能的に求めた方が効率が良いだろうに。  ああ、でもその問に回答を見出しても文句の何たるかは結局良く分からないだろうなぁ……  まあ、そんな事はどうでも良いのだ。     
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