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「もうよい、料理人」
寒さでがちがちと震える料理人を哀れに思ったのか、太陽神はぼそりと告げた。
「叶わぬ望みだったのだ。そうとわかっていたのに、わたしの料理人なら
可能かもしれないと夢を見てしまった。すまない。無理をさせてしまった」
「太陽神様……」
主は悲しそうに微笑んだ。その姿は寂しく、切なかった。
失敗続きの料理人を責めもせず、「わたしの料理人」といってくれる優しい主、
それが太陽神だ。なんとしてもその望みを叶えてさしあげたい。
料理人は目を瞑った。もはや私ひとりではどうにもならないのかもしれない。
では誰かに助力を頼んでみては? しかし一体誰なら適任なのか。
料理人はふと思い出した。そういえば太陽神様は、人間のどのような姿を見て
アイスクリームを食べてみたいと仰られたのか。
答えはきっとそこにある。それはもはや料理人としての勘だった。
ひょっとしてあの方なら、お力を貸していただけるかもしれない。
「太陽神様、もう一度、もう一度だけ私に機会をいただけませんか?
御招待したい方がいるのです」
「招待したい者がいるだと……? それは別にかまわぬが」
太陽神は不思議そうに答えたが、わずかに嬉しそうであったのを
料理人は見逃さなかった。
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