とけないアイスクリーム

2/4

24人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
「太陽神様、お客様をお招きしておりますので 円卓までお越しください」  料理人の声が宮殿に響くと、太陽神はいそいそと 現われた。円卓の向かい側に来客の姿を確認すると、 太陽神は息をのんだ。 来客は気高く美しい女性であり、太陽神と同じように 尊き神だったからだ。 「太陽神様、こちらは雪と冬の女神様です」  料理人に紹介された雪と冬の女神は、優雅に微笑んだ。 「初めまして、太陽神様。お目にかかれて光栄ですわ」  花が咲き誇るかのような、あでやかな微笑。 太陽神は挨拶をするのも忘れるほど、女神に見惚れて しまった。同時に太陽神の体温も上昇し、周囲まで 暑くなってくる。 「あら、太陽神様ったら」  惚けたまま体を熱くする太陽神の姿に、雪の女神は 愉しげに笑った。  料理人は慌てて太陽神に駆け寄ると、そっと声をかけた。 「太陽神様、御挨拶しませんと」 「むむ。そ、そうだったな」  料理人の声掛けにやっと正気を取り戻したのか、 いつもの太陽神に戻った。 「ようこそ、雪と冬の女神殿よ。わたしは陽を統べる 太陽神にございます。以後お見知りおきを」  やっと挨拶することができた太陽神に、料理人は ほっと息をついた。雪の女神は軽く会釈すると うやうやしく挨拶を返した。 「お招きにあずかり、嬉しゅうございます。 なんでも今日は、貴方様の料理人による最高級の アイスクリームをごちそうしていただけるとか。 わたくし、楽しみしておりましたの」  にっこりとほほえむ雪の女神に、再び驚く太陽神 であった。  
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

24人が本棚に入れています
本棚に追加