とけないアイスクリーム

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 太陽神と雪の女神は円卓を挟んで向かい合わせに座った。 朗らかに微笑む雪の女神と、女神と目が合うたび顔を赤らめている 太陽神は対照的だ。 「お待たせしました。最上級のアイスクリームでございます」  円卓に置かれたのは、雪山を模した山の形の巨大なアイスだった。 山の頂上に溶かした飴を雲状に絡めており、きらきらと輝いている。 「まぁ、きれい。飴は雲をあらわしているのね」  ぽんと手をたたいて女神は喜んだ。彼女の城がある雪山を 表現していると気付いてくれたようだった。 「雪の女神様、仕上げをお願いしてよろしいでしょうか?」 「ええ、わかりました」  女神はスプーンを手に取ると、雪山のアイスクリームから ひとさじすくいとる。スプーンを口元にもっていくと、ふぅっと息を 吹きかけた。雪の女神の息吹は凍てつく氷となり、アイスを 氷の膜で覆った。 「これで、溶けないアイスクリームの完成ですわ。 太陽神様、お口を『あーん』してくださいませ。 食べさせてさしあげます」  スプーンを差し出された太陽神は、太陽のように真っ赤になった。 「お、お客様にそのようなことを……」 「あら、これが一番いいと思いますわ。私の氷を溶かすことができるのは この世で太陽神様だけ。ならばこうして食べさせてさしあげたほうが 確実に太陽神様のお口に入ります。それに、このほうが私も楽しゅう ございますしね」  雪の女神はいたずらっぽく笑った。その可愛らしさに太陽神の 顔はますます赤くなる。 「太陽神様、お早く。太陽神様の熱で溶けてしまいますわ」  促されて太陽神はおそるおそるスプーンに口を近づける。 「はい、あーん」  女神の呼びかけに応じるように、太陽神も「あーん」と呟きながら 口を開ける。氷の膜は太陽神の口の前で瞬時に溶け、アイスクリーム だけを食べることができた。それは太陽神が初めて口にする とろけるような極上のアイスクリームであった。      
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