宝物

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例えば好きな歌が。 君と同じならいいな。 違ってもいい。 君が好きな歌を、僕が好きになれたらいいな。 そんなことを考えながら、ぼうっと君を眺める。 長い髪を後ろで束ねた、うなじが美しかった。 君はイヤホンをして読書。 僕はライブ映像を眺めるふりで、そっと君を伺う。 こんな箱庭みたいな部屋に君を閉じ込めて、一緒に過ごす時間は宝物だった。 話をするのが苦手な君が、一緒にライブ映像を観てくれない、とか、談笑したい、とか、そんな不満がないわけじゃない。 だけどどんな不満も、君が好きすぎる故なんだよ? 君といたい。もっと君を知りたい。共有したい。 好きになればなるほど、その想いは強くなるんだ。 これを恋の病というのか。 甘い夏の日差しのように、ふたりを包む空気が輝いている。 そんな恋の詩を、君に送りたくて。 でもうまく伝えられなくて。 こうやって一緒に過ごして、テレパシーで伝わらないかな、なんて馬鹿なこと考えてる。 宝物。君との全てが宝物。 そんな風に思う僕を、君は笑うかい? END
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