ボンボンのお仕事

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 ボニー・バーンズ、米合衆国国籍、職業、私立探偵、年齢・・・、通称”ボンボン”。どうみても、日本人の風貌なのだが、日系四世。見てくれは、隔世遺伝ということらしい。巨漢だ。横も広く、角ばっている。筋肉質で、レスラーといっても通りそうだが、荒事はからっきし、ということらしい。巨漢の常で、頭の中は・・と思われる。  それを偏見というのは簡単だが、彼の場合は、実際そのとおりなのだろうと思われる。無口というより、口に障害があるのか、たどたどしいセリフしか聴いた記憶が、ない。  それが、東美惠子巡査の彼への理解であった。私立探偵ではあるが、上司と組んで動いている。さもなければ、報告書はかけそうにない。上司は、当然、美惠子より年上。こちらも、どこか常に春風を受けて、茫洋としている風の在る男性だったが、遥かにまともだ。  上司の名は、東八郎。この男は日本人だが、今は米国籍を取得し、世界を相手に手広くやっているらしい。 「向こうのほうが、仕事になるからね」東八郎は、その軽いリーゼントの、日本人だがどこかエルビス・プレスリーを思わせるハンサムな顔でいった。 「で、何を調べているのですか」 「それは、依頼主の秘密だから、いえないな。あ、ボンボンに聞いても、彼は知らないから。そこは、よろしく。なかよくやりましょう」八郎は、なれたしぐさで手を差し出して美惠子に握手を求めた。 「いいんですか、あんな人たちと握手しちゃって」 「あ・・ああ」  ミニパトのバディ、リンコ巡査に言われて、改めて美惠子は、何も考えず自分があの八郎とボンボンと握手してしまったことに気がついた。あんな怪しい連中と誼みを通じてしまうのは、警官としては、けしてよいことではない。 「まあ、いいんじゃない?別に袖の下をもらったわけでもなし」  そう言い訳するしかなかった。しかし、気になったのは、彼らの、握手した彼らの掌のなんともいえない感触だった。それが、掌か・・それとも掌から伝わってくる”何か”だったのか、定かではない。美惠子は、その”何か”を信じるタイプの刑事・・・だったのだ。その”何か”のおかげで、幾人もの凶悪犯人を検挙、その実績を持って出世。さらにあの凶暴なマグナム拳銃、スーパーブラックホークを操り、大排気量のバイクを自在に操る。通称”女ドーベルマン刑事”だったのである。
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