ボンボンのお仕事

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「かもしれないね。それならそれで、雑魚は雑魚なりに、お掃除をするのも、われわれの”お仕事”ということになるが」 「そうですね。暇つぶしには、なりそうだ」 「で、この湘南市・・なんか、名前も怪しいけど、さらにうさんくさい」  ウイングシティは東京湾の東側、房総半島海岸沿いに広がっている。なんだか、地図を見ると東京湾内海底を横断するアクアラインの出口から出た噴水のような絵になっている。それを鳥の翼に見立てての”ウイングシティ”の名前だが、実際を言えば、東京側が強いのが現状。 「エドメガロポリスのように超高層ビルが林立するというわけではないが、新興都市としての賑わいというか、”匂い”は似ているな・・」 「建設利権とかが集中しますからね」 「エドメガロポリスも、そうだった。いや、たぶん、その度合いは、このウイングシティの比ではないだろうがね。NYのビッグアップルに習って、”バッド・アップル””腐ったりんご”とか”スカルシティ”と揶揄されたわけで。日本中の富を吸い上げる、供覧的繁栄と腐敗の象徴。あの世界のことを思えば、この世界はその腐敗具合は、やさしいというか、マトモだと私には感じられるほどだ」 「そうなんですね、八郎さん」 「だからこそ・・この程度の腐臭は、許容範囲ではないかと、つい思ってしまうが」 「これが、さらに加速すれば、エドメガロポリスのようになってしまう?」 「そのとおりだ、ボンボン。必ずしも日本が発信地だとは思わないが、あの腐敗は全世界的な傾向となり・・最終的には、その”腐臭”をかぎつけてやってきた幻魔の侵攻によって起こった極小氷河期のために、日本は壊滅的打撃を受けたのだからね」 「そうでしたね・・それは、黒野さんから聞きました。幻魔は、地球人類の魂の”腐臭”をかぎつけて、宇宙の果てから飛来するハエやゴキブリのようなものなのだと。なんとなく、理解できる話ですが」 「それは、魔族の本能のようなものなのだろうね」 「その、この町の腐臭をかぎつけて、きゃつらが寄ってきた・・ですか」 「そして、魔族は人々のさまざまな欲望をたきつけて、さらに腐敗を加速する。その意味では、あの世界で、さまざまな魔族が暗躍して、エドメガロポリスの腐敗を加速増幅していたのだな。私は、何も知らず、ただ悪人を退治していれば良いと思い込んでいたのだが、そういうシステム、からくりになっていたのだ」
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