ボンボンのお仕事

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「それこそ、彼の死後、ああ、あの人はこのことを言っていたのかと、やっとこさ理解されるのが関の山で。時間をかけて、シコシコやっていくしかないのかもな」 「その意味では、まだぶん殴ればなんとかなる幻魔の方が、物分りがいい」 「と、皆が、そう考えている間は、人を教え導くってのは、前途多難なのだろうな」 「実際がところ、”誰かがやればいいのに”とは思うけど、自分がいざやるとなれば、それがうまくいかない理由を、すぐにも百くらい思いつきますからね」 「ま、そんなものさ。話せば判るっていうが、それで判るくらいなら、誰も苦労はしないし、世界は千年も前にもっと平和になっているはずだ」 「そして、千年前の文化世界のまま今に至るかも」 「なるほど。確かに、もし、人間から欲望を抜いたら、このように文化文明成長をしていなかったかもしれない。その意味では、聴く耳を持たないのも無理はないかもしれない」 「ならば、文化文明の成長ってのを肯定した上で、魂の腐敗を起こさないように提案すると、まだ、人は耳を傾けてくれるかもしれないですね」 「黒野女史にあったら、聴いてみようとにかく、人を育ているというのは、時間がかかるのだろう、あわてて、手品のようにころっとかわれるのなら、誰も苦労はしないのだろうな」 「まあ、そうですけどねえ。こういうご時世なのだから、もちっと何とかならんかという感じですけど」 「じゃあ、君は簡単に変われるかね」 「いえ・・」 「多分そういう話なのだろうさ。他人が変わるのは簡単そうに見えるが、自分が変わるってのは、宇宙を壊しても真っ平ごめんというのが、実際なのさ。或る意味、そのように人間は出来ているのだろう」 「やっかい・・ですね」 「ああ、そうだ。そうしてお互いに、相手にだけ変わることを求めるから話が厄介になり、そして殺し合い、戦争になる。或る意味情けない話なのさ。人類は、その昔からずっとそれを繰り返し・・・挙句に幻魔になってしまうんだ」 「救われない」 「仏様のように悟るとか何とかは、面倒なのだろうが、心を腐らせないためにするってのは、たとえばそれは体の清潔さを保つように、日に一回はお風呂に入りましょう、みたいなものなんだろうに。それさえも、面倒くさがってやろうとしない」 「心が汚れ腐らないように、一日一回風呂に入るように心の健全さを保ちましょう・・ですか」
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