ボンボンのお仕事

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「それが、まあ、東丈の言うところの”良心による反省”だったはずなのに・・なんだか、仏様のような悟りを得なくてはならないって面倒なことを考え始めたから、話がおかしくなったのかもしれないね。心を磨けば、いずれ魂本来の力がよみがえり、超能力が使えるようになるっていうような・・  今は”ただの人”だけど、強い超能力が使える超人になる。東丈は、それをもって目覚めた超能力者によって地球を守ろうという作戦だったようだが。それは、ある種、自分に自信のない、ただの人にとっては、とてつもない魅力だったのだろう・・  しかし、それは怪しげな新興宗教が信者を獲得する常套手段の一つなんだけどねえ、東丈は、それに気づいていなかったのだろう。  しかし、始めて、途中でそれに気がついたのだが、そのときには、彼でも修正不能なほど、GENKENの軌道は変わってしまっていたのだろう。  結局、彼らは自分たちの劣等感を解消し、他人に対し、自慢するだけでなく、相手を支配することを、無自覚にその修行の目的にしてしまったわけだからね。  ねえ、ボンボン、それって、幻魔への道、まっしぐらだとは思わないか」 「はあ、まあ、でも、それはほかの世界の話で、ここじゃない。八郎さんは、その、兄貴がそんな新興宗教もどきの活動を始めたって”世界”のことを知っているのですか」 「うむ、まあ、知っている。こうして、この”世界”に来ているように、休暇を利用して”いろんな世界”を散策するのが、私の楽しみだからね」八郎は、茫洋としていった。 「で、そろそろ、話を戻しませんか、八郎さん。所詮、兄貴は兄貴、僕は僕ですからね。で、その振り子は、僕たちをどこに運んでくれるのでしょうか」 「確かに・・しかし、君は、こう、考えたことはないか」 「?」 「君たち東三兄弟、三人力を合わせて、はじめて本当に幻魔と戦える存在になるのだ、と」 「それは・・・」 「わたしの見るところ、戦国武将の毛利元就じゃないが、君たちは”三本の矢”なのだ。しかし、今のようにバラバラでは、どうにもならん」 「はあ・・」 「というか、まさにそのバラバラ状態こそ、幻魔の思う壺だと思ったことはないのかな」 「正直、ない、ですね。僕たち兄弟は、昔から、こうでしたから。もっとも、三千子姉さんは、兄貴には母親のごとく、でしたから、その意味では僕が離れているだけで」
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