海座頭

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しばらくして無線を聞きつけたサザエやアワビ漁を専門とする漁師が2人,6人程度しか乗れない小型漁船で複雑な岩場を縫うようにして近づいてきた。船の先に座っている漁師が俊輔と正人を確認すると,操縦するもう1人にスピードを緩めるように合図した。 「おーーい,お前らか!? 怪我をしているのって!?」 なんとか声が届く距離から漁師に大声を掛けられた。俺は動けそうになかったので,正人が立ち上がって両手を振って応えた。 「そうです! 友達が怪我をしています!」 漁師がさらに船を近づけようとした瞬間,船の先に座っている漁師が慌てて船を止めるように叫んだ。 「止まれ!! ダメだ!! 進むな!! バックしろ!!」 船は海の上で急ブレーキを掛けるようにエンジンを吹かした。レバーをバックに入れると,船が激しく左右に揺れながらバックした。船は静かに下がりながら,俺達のいる岩から距離をとった。漁師達は船の上から海の上に浮かぶ真っ黒な楕円形の塊を見ていた。 「おーーーい! お前ら,こいつになにかしたかぁ?」 船の上から大声で叫ぶ漁師に向かって正人が大声で応えた。 「友達が蛸と間違えてオコシで引っ掻けましたぁ!」 船の上で漁師達がなにか話し合っていたが,その表情は険しく,正人を不安にした。
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