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桜は相手と競りながら、一問リードして、先に抜け出し、代わって僕が解答台に上がる。緊張で全身から汗が吹き出し、心臓は破裂しそうなくらいに激しく鼓動する。頭の中が真っ白になって、出題者の声も上手く耳に入ってこない。あっという間に逆転され、相手チームは最後の一人が解答台に登る。台の下から、
「謎、しっかりしなさいよ!!」
と彼女の檄が飛んでくる。僕は深呼吸を繰り返し、どうにかこうにか自分を落ち着かせ、ようやく三問正解して解答台を下りる。だけど、既に相手があと一問正解すれば終わりという状況まで追い込まれていた。僕は彼女に申し訳なく、肩を落とすことしかできない。彼女はそんな僕の肩をポンと叩き、
「大丈夫よ。私に任せて」
と笑顔を見せて解答台に上がった。
彼女は言葉どおり、あっさりと二問正解し、相手に並んで見せると、ボクに向かってピースサインをしてみせる。
「頑張って!!」
僕にはそう言うことしかできない。
そして、運命が決まる問題が読み始められる。
「五次以上の代数方程式に解の公式……」
問題の途中で、彼女が先に解答ボタンを押した。
「エヴァリスト・ガロア」
彼女は力強く解答する。僕もそれで勝利を確信した。
しかし、少しだけ間を置いてから、ブーっと不正解を告げる音がなる。僕の方を振り向いた彼女の顔は真っ青になっている。僕も何がなんだかわからず、かける言葉も見つからない。
お手つきで解答権を失った彼女を横目に、相手チームが解答ボタンを押し、
「ニールス・アーベル」
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