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 四月、僕は無事に合格して高校生になっていた。受験が終わってから、ずっと彼女のことが気にはなっていた。彼女も無事に合格できたのかと。もっとも、彼女が合格していたとしても、他の高校に進学した可能性がないわけではない。たとえ同じ高校に進学していたとしても、彼女は僕のことなど覚えていないに違いない。そんなことはわかっているのだが、知らず知らずのうちに、視線は彼女を探してしまう。  入学式から十日ほど経った水曜日の昼休み、僕の視界に飛び込んできたのは、学校の中庭にある桜の木の下のベンチに座る彼女の姿だった。彼女は受験のときと同じように、黒く長い髪を時々掻き上げながら本を読んでいる。どんな本を読んでいるのかはわからないが、彼女は時々、何かに納得したかのように小さく頷く。ようやく彼女を見つけたものの、僕はどうするべきかわからない。彼女を探していたといっても、特に何か目的があった訳ではない。ただ、何となく気になっていたという程度の話なのだから。  声を掛けてみるべきか、あるいはこのまま立ち去るべきか。そんなふうに悩んでいると、突然彼女が本から視線を外し、僕の方を向いた。僕と彼女の視線と視線がぶつかる。すると、彼女は大きな目を少しだけ細めて、ニッコリと微笑んだ。その笑顔は、少なくとも僕がこれまでに見てきたどんな女の子の笑顔よりも素敵で可愛い。     
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