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「クイズって、あなたの名前なのね。霧のクイズって、どんなクイズかと思ったわ。ね、どんな漢字を書くの? カタカナって訳じゃないんでしょう?」
「“謎”って書いて、“クイズ”って読むんだ」
「そっか。変わった名前ね。でも、素敵な名前」
彼女はそう言って、大きな瞳を輝かせる。
僕としては、“変わった名前”と言われるのは慣れているので何とも思わないが、“素敵な名前”なんて言われるのは初めてだから、何となく恥ずかしくなる。もちろん、彼女がどうして僕の名前を素敵だと思うのかはわからない。それでも、彼女に“素敵な名前”と思われることは、僕にとってこの上なく嬉しいことだ。
それから僕たちは、五分ほど、どこのクラスだとか、どこの中学校を卒業しただとか、簡単な自己紹介のような話をした。それでわかったのは、彼女が隣町の中学校を卒業して、今は隣のクラスにいるということだ。それ以外には、大した情報はなかった。だけど、恋する僕にとって、彼女の情報は、どんな些細なものでも大事だった。
「ところで」
話が一段落したところで、僕は切り出した
「ところで、さっきは何の本を読んでたの?」
「ああ、これ? クイズの本よ」
彼女はそう言って、本の表紙を見せてくれる。それは確かに一問一答式のクイズの本だ。
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