Quiz

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 夜の海に昼間のような喧騒はなく、波の音だけが響いている。真っ黒い空には雲もなく、満月に近い月が煌々と輝いている。僕と彼女は並んでゆっくりと波打ち際を歩く。押し寄せる波がときどき足元に届きそうになり、慌てて波から遠ざかる。  しばらく、二人で他愛もない会話を交わした後で、彼女が切り出した。 「私には夢があるの」 「夢? どんな夢?」 「クイズインターハイで優勝すること」 「えっ!?」  僕は思わず言葉に詰まる。  クイズインターハイとは、毎年夏に開催される高校生を対象としたクイズ大会だ。三人一組でチームを組み、各都道府県で予選を行い、一チームだけが本戦に出場できる。テレビでも大々的に放送され、視聴率も決して悪くはない。彼女の夢がクイズインターハイ優勝というのは想像できなかったわけではないが、実際にそれを耳にすると、やはり驚かざるを得ない。何せ、クイズインターハイには、全国の有名進学校が各都道府県の代表チームとして出場してくる。僕たちの県でも、いつも上位の進学校が代表を独占している。そう考えると、優勝どころか、本戦出場さえ大変な困難を伴うことが明らかだ。  だけど、彼女が冗談を言っているわけではないことは、その真剣すぎるほどの表情からもわかる。クイズに関する力では、僕なんか彼女に到底及ばない。それでも、僕は少しでも彼女の力になりたいと思った。 「来年は必ず、クイズインターハイに出場するわよ」     
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