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僕たちは理沙の圧倒的な知識に引っ張られ、ラウンドを勝ち進み、ついに最終ラウンドを迎えた。最後の相手は常連の進学校チームだ。この相手に勝てば、本戦に出場できる。だけど、彼女の夢はあくまでもクイズインターハイでの優勝だ。予選の最終ラウンドなんて通過点にすぎないのだから、こんなところで負けるわけにはいかない。だけど、負けられないというプレッシャーが重くのしかかり、僕は入試のとき以上に緊張していた。そんな僕の様子に気づいた桜が、
「先輩、大丈夫ですか? 落ち着いてくださいね」
と声をかけてくれる。
「大丈夫だよ。ありがとう」
僕はむりやり笑顔を作ってみせる。そんな僕の横で、理沙がいつものように長い髪を掻き上げる。ふわりと漂うシトラスのような爽やかな香りが、少しだけ僕の緊張を解してくれた。
最終ラウンドのルールは、簡単に言えば早抜けだ。まず、各チームから一人ずつ解答台に立ち、早押しで解答権を得る。そして、三問正解した時点で次の選手に交代する。そうやって、全員が先に抜けたチームの勝ちとなる。つまり、一人三問、三人合計で九問を先に正解したチームが勝ちとなる。そうなってくると、解答する順番も大事なのだが、そこは話し合うまでもなく、
「一番手が桜、二番手が謎、最後が私でいいわよね?」
という一言で全てが決まった。
そして、運命の最終ラウンドが始まる。
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