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カラスたち一行は、朝になるとまた山道に向かって歩いた。アトラの身にまとっている布は、まだ湿っているが、定期的に水分の補給も考えないといけないと思っていた。山を越えてアトラも他のモンスターたちと交流するために湖を出ることもあったと言っていたから、それくらいは布も保つとは思うが、この先、どれだけの道を歩くかわからない。天候ですら日々変わっていく。湖で、汲めるだけ水は汲んできたが、カラスたちは街にいたときのように身体を綺麗に洗うことすらままならない。
しばらく歩くと、アトラが、声を出した。
「この先山道。獣道」
言って、長い指で先を指した。
「山道っていうから、ちゃんとした道があると思ってた……」
バニラが嘆息すると、へたりとその場でしゃがんだ。それを見て、カラスが、
「これは確かにきつそうだけど。明るいうちに進もう。じゃないとそれこそ、獣に遭遇するかもしれないから」
「じゃあ、俺案内すればいいか?」
言って、アトラはメアリーを見る。メアリーはカラスと顔を見合わすと、
「そうね。お願いできる?」
柔和な表情でアトラに告げると、アトラは、
「わかった。じゃあついてこい」
言って、木や草を分けてアトラが山道を作っていった。カラスたちはそれに続く。大きな木の枝や、ツルを倒しながら進んでくれるアトラを見て、カラスは本当に優しいやつだと、自然に目頭が熱くなるのを覚えた。
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