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「そのためにどうするべきか、無い脳みそ振り絞って考えろ、五分以内にだ!」
「む、無茶苦茶な……」
「無茶でもなんでも知るか!俺は……っ」
「あのう……」
突然、第三者が割って入った。ずっと黙りこんでいた少年だ。
まだ声変わりを迎えていない、男の子とも女の子ともつかぬ高い声で、自分達二人を交互に見上げる。
「エレベーターって、天井が開くようになってるんじゃありませんでした?その……肩車して下さったら、僕が調べてみますが」
震えていたが、思いの外しっかりした声だった。それは、さっき崇が考えた案ではある。実行に移さなかった理由のひとつは、天井を調べるためにはどう足掻いてもこの少年の協力が不可欠だったからだ。
簡単なこと、単純に彼が一番体重が軽いのがわかりきっているからである。太った中年男は上に乗るなど論外だし、崇はおじさんよりは軽いだろうが中年男に持ち上げられるかどうかはわからない。というか、協力を要請しても聞いてくれる気がしないし、あんなオジサンに肩車されるのはちょっと嫌だ。
とすれば、必然的に崇が少年を肩車する形にするしかあるまい。でも、怯えてるかもしれない子供を働かせたくなかったのも確かなことで。
――まあ、この子に気力があるなら大丈夫かな。
崇が、じゃあ俺が肩車をするよ、と言いかけた時だ。
「なら俺が肩車をしてやる。さっさと天井を開けろ、チビ」
「え……」
「俺が働いてやると言ってるんだ、何か文句でもあるのか!?」
中年男が名乗り出てしまった。仕事をしたくない、自分達を働かせたい――そんな雰囲気がバリバリだったのにどういうつもりだろう。こんな言い方をされてしまっては彼も嫌とは言えまい。ただでさえ生理的に受け付けない中年男の首を跨ぐなんて真似はしたくないだろうに。
「…………わかりました、お願いします」
少年はしぶしぶと言った様子で、男の肩車を受けた。少年の足の間に頭を通す瞬間――男が不自然に鼻の穴を膨らませて息を吸ったのを見てしまう。まさかこいつ、そういう趣味だったのか。確かに可愛い顔はしているが男の子だぞ、このショタコンの変態め――そうは思ったが、口にする勇気はない。
少年は心底不快そうな顔をしながらも、天井へと手を伸ばした。
――そこが開けば、脱出できるかもだけど。
上手くいくことを願い、崇も天井を見上げたのである。
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