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私が言葉に詰まっていると、気分が山の天気並みに変わりやすい奏多さんが「そだそだっ」と別の話題を振ってきた。
「お土産があるの! 山に行った時の!」
そういえばこの夏休みの間、彼女は山奥に行っていたのだった。自前の天体望遠鏡を持って行って、おひとり様の一週間を満喫してきたというのだ。行動は子供っぽいけれど、星の観察という意外と文化的な趣味をしている。
私の前に、マスコットが差し出される。まず右手。
「こっちがー、青色っ!」
おそらく射手座を象ったのだろう、デフォルメされた人馬の小さなぬいぐるみだった。次に左手。
「こっちがー、ピンク色っ!」
色違いらしい。私の誕生日に合ったものを選んできてくれたようだった。
さあどっち!? 意気揚々と差し出してくる友人は、今日も元気だ。
私は少し悩んで青色をとった。その選択に特別な意味はなかった。
結局断り切れなくて、友人の後についていく。
学校から歩いて十分くらいの、二階建てショッピングセンターだ。
二階の出入り口は駅と連結している。ワゴンのミニマドレーヌ屋さんやたこ焼き屋さんがあったりもして、ちょっとした広場になっている。私たちは一階から出ても良かったのだけれど、マドレーヌ目当てにわざわざ二階出口経由で行くことにした。地上への階段もあるので問題ないルートだ。
まだまだ入場者の多い人の流れに逆らって、私たちは外へ出た。
チョコとメープルと抹茶のマドレーヌを二つずつ、紙袋で買って、すぐ横の階段を下りる。
同じ階段を上がってくる二人組がいた。
黒っぽい髪で高身長の男子と、それより背が低い栗色髪の男子。
後者は、噂に疎い私も知っている顔だった。彼はこの地域で有名だ。繊細な美貌を持つ十七歳。私より一つ上だ。許嫁がいると知られた今も、多くの女生徒の心を掴んでいるという。
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