誰かいる

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 それから三分もせず、奏多さんはこちらに合流した。 「なーにが足りなかったのかなー? いっそ呪いの人形でも電話機の近くに置いて試してみるとかしないとダメかなー?」 「奏多さんのそういう度胸ってどこから湧いてくるものなんでしょうね」  まったく羨ましい限りだ。  わたしは今とてもしょんぼりしているぞ! と全身で表す友人に、私は気の利いた言葉を返せなかった。  スーパーの前で彼女と別れて、わたしはこのまま買い出しをする。多くの地元の奥様方に紛れて買い物をすると、制服の私は多少は浮いてしまう。  けれど、夕食の買い出しをする顔ぶれなんてだいたい決まっているものだ。  それに私は顔が知られている。 「ああ、形栖さま」  その声に、私は牛肉を見ていた顔を上げる。  私に恭しく頭を下げてくるご老人に会釈すると、相手も満足して去って行く。  形栖は家名。みやは私を表す名前だ。  老人の名前は知らないし、顔ももう忘れた。  肉じゃがの材料をカゴに転がしていった。しらたき、にんじん、牛肉。……じゃがいもは家にあったからいいや。  家に帰る途中、急な雨に降られた。  夏は大雨が通りやすい季節なのに、今日は折りたたみ傘を持っていない。  公園の滑り台の下に潜った。ゾウの形の大きな滑り台は、お腹の下がちょっとしたトンネルになっていて、幅もある。誰かが置いていったらしい小さな木の椅子をありがたく使わせてもらう。買い物袋を地面に置いてしまって、雨が過ぎるのを待った。  夏の雨は強い。一粒一粒が当たると痛いくらいに大きくて、まともに浴びると大惨事だ。私の学校の制服は白いから、なおさら気を付けないと汚れたり透けたりしてしまう。  ……。  …………。  何分経っただろう。  雨の様子を見ていた視線を、前に戻した。  隣に何か居る、  と気付いた時には、体は動かなくなっていた。  視界の端に黒が見えた。  さっきまで何もいなかったはずの至近距離。 「――……。」  それはたしかに、私を見ていた。黒、……長い髪。そして真っ白な顔。  まともに焦点を合わせなくたって、それが人の形をしていることなんて、容易にわかってしまうのだ。  私の隣にいる。膝を抱えて、じいっ、と私を見ている。  いつから?  私が外の雨を眺めている間、ずっとそこにいたの?
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