109人が本棚に入れています
本棚に追加
「ツカサ・クグルギ様、ブラック様、お待ちしておりました。我らが首長がお待ちです。こちらへどうぞ」
透き通るような、男だか女だか解らない声。
黒いローブの人間から出て来たとは思えない美しい声に、俺は面食らった。
けれど、ブラックは相手の声も既に解っていたかのようで。
「行こう、ツカサ君」
な、なんだ。いつになく真剣な顔してるじゃん。
ここってそんなにシリアスな場面……なの?
良く解らないけど茶化すのもどうかと思い、俺は素直にブラックの後に続いた。
エントランスの端に在る、金の手すりが付いた螺旋階段を上っていく。三階まで来ると、周囲の細かすぎる壁紙があまりに目に痛くて、俺は頭痛を覚えた。
うわーもう本当こういうの苦手。目が疲れる。
壁紙が細かすぎて、漫画にしたら背景描く人が死ぬんじゃなかろうか。
「キュ~」
「ありゃりゃ、ロクも目が回ったか。目ぇ閉じてな」
ロクは自然の子だからこういうのは慣れてないよな。
螺旋階段とかも今まで無かっただろうし。
顔を掌で覆ってやると、ロクは落ち着いたのかスヤスヤと眠り始めた。最近本当眠る事が多くなったな、ロク……なんか病気じゃないといいんだけど。
「こちらです」
ひいこら言いながら最上階まで階段を上ると、黒いローブが廊下へと誘う。
緋毛氈の敷かれた廊下はやっぱり豪華絢爛で、そこかしこに金の装飾が見えた。華美ここに極まれりとゲッソリしたけど、通された部屋もまた凄かった訳で。
「こちらでお待ちください」
中に入ると、唐草模様の壁紙の洪水。
天井は丸く、フラスコだかフレスコだか知らないが、写実的で美しい中世絵画っぽいのが描かれている。調度品も家具もラスターの成金趣味な屋敷といい勝負だ。この世界本当ゴリゴリに飾り立てるの好きね。
だもんで、当然庶民派の俺は居心地が悪く、ふっかふかのソファに小さく纏まって座るしかなかった。ブラックは流石のお坊ちゃんと言った所か、この部屋の華美さなんて気にもせず足を組んでふんぞり返っている。
ぐうう、一番部屋にそぐわない恰好してんのにコイツうう。
最初のコメントを投稿しよう!