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でもそんな姿に少し緊張が解れて、俺はブラックに問いかけた。
「ブラック、その……シアンさんってどんな人?」
「容姿のこと? うーん……君が好きそうな美人とかじゃあないよ」
「えっ……そ、それ……どういう……」
意味での「好きそうじゃない」ですか、と、続けようとしたと同時。
「あら。随分とご挨拶ね、ブラック」
ドアの方から、落ち着いた壮年の女性の声が聞こえた。
黒いローブから漏れた声の比じゃないくらい、とても綺麗な声が。
「シアン……」
これが……シアンさんの声?
ブラックの言葉に思わず振り返って、俺は思い切り目を見開いた。
神族という存在で、世界協定という大きな組織に属した女傑。
世界の為に、俺を殺そうとしていた……怖い存在。
その人の、姿は。
「おばあ、ちゃん……?」
一瞬、俺のお婆ちゃんに見えた。
いや、そうではない。彼女は年老いているが、俺のお婆ちゃんとはまるで違う。美魔女っていう言葉が最近流行ってたけど、シアンさんはまさにそう言いたくなるほど綺麗な老年の女性だった。
けど、彼女の姿みて驚いたのは、それだけじゃないんだよ。
「貴方が、ツカサ君ね?」
凛として美しい壮年の女性の声で、俺に笑いかけるシアンさん。
稲穂色の輝く髪が、さらりと耳に掛かって流れる。とっても絵になる光景だ。
しかし、今の俺にはそれを綺麗だと言う余裕はない。
だって。だって、シアンさんは。
「え……エルフ……」
――そう。
彼女の耳の先端は、人間よりもずっと長い。
神族のシアンさんは、エルフとしか言いようのない姿だった。
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