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顔を上げると、シアンさんが俺に向かって微笑んでいる。
まるで俺の考えがその通りだと言わんばかりの優しい表情だった。
「あの、もしかして神族って……」
俺の推測を含むような声に、シアンさんは軽く頷いた。
「ええ。貴方が思っている通り、私達神族は、かつて神に【エルフ】という固有の名を頂いた一族……貴方が今仰った異世界のエルフとよく似た種族なのですよ」
「じゃあ……ホントにマジのエルフなんですか?」
「厳密に言うと、違う部分は有ります。私達はあくまでも神族の部類ですし、森に棲むのではなく【神域】に住んでいます。それに、この名は神と我々のみが知る名として代々神族にのみ伝えられた物。……この名を理解し、我々を見てすぐに名を口にする事が出来るのは、神族と神、そして……異世界からの来訪者だけ。周知された名ではないのです」
成程……って、どうしてシアンさんが異世界の事を知ってるんだろう。
てか、転移魔法がないこの世界では、異世界の事を知り得る人物なんていないはず。ブラックが言ってたけど、異世界の存在を考える人間なんて変わり者か珍しい学者くらいってレベルだしな。
じゃあ、どうしてシアンさんは。
恐る恐るシアンさんを見ると、相手は優雅な微笑みで軽く首を傾げた。
「貴方は何か知りたい事があるのでしょう。だから、ここまで来た。さあ、言ってごらんなさい」
なんだか全てを見透かされてるみたいだな。うう……。
ちょっと居心地が悪いが、知る事が出来る事は知っとくべきだ。もしかしたら、俺をこの世界へ飛ばした犯人や、戻る方法の切っ掛けも見つかるかもしれないし。……言っておくが、俺はまだ元の世界に戻るのを諦めてないからな。
一度深く呼吸をし、覚悟を決めてから、俺はシアンさんに向き直った。
「じゃあ、単刀直入に言います。俺……黒曜の使者に関する全ての事と、俺を始末しようとした理由、それに俺が何故この世界に拉致されたかの理由か推測と……元の世界に戻る方法を知っていればそれも教えてほしいです」
「随分と質問があるのね」
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