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クスクスと笑うシアンさんに、隣にいるブラックが嫌そうに溜息を吐く。
確かに馬鹿にされているようにも思えるが、シアンさんみたいなお婆ちゃんから見れば、俺らなんてヒヨっ子なんだし……「まあ、可愛いわね」って笑われるのも仕方ないだろう。現に俺ちょっとがっついてるしな。
でも、それくらい聞きたいんだから仕方ない。
シアンさんにも俺の熱意は伝わったのか、彼女はひとしきり笑った後ぽつぽつと話し始めた。
「ではまず、黒曜の使者の事をお話ししましょう。私もあまり長話は好きではないので、出来るだけまとめて言いますね」
そう切り出して彼女が話してくれた内容は、中々に呑み込みがたい物だった。
黒曜の使者という存在は、元々は神族のみが所有する古い歴史書……
【六つの神の書】のみに記された災厄の権化の名前だった。
その存在は第一の神の書から既に登場しており、神が直接「この存在が異界の狭間から降臨する時、世界が混乱し破滅を迎える」と神族に伝えていたらしい。
その話が神族と交流を持った冒険者によって流布され、遠い遠い時代のおとぎ話となり、遥か昔に多くの者が知る事となった。けれども、今ではその伝承も廃れ、黒曜の使者を知るのは神族と僅かな人族だけになってしまったとか。
ブラックもその内の一人であり、貴重な知識の担い手という訳だ。
で、黒曜の使者が何をして平和を乱すのかというと、実際解ってないらしい。
今の神族が知っている事は、かなり少ない。
解ってる事は「黒曜の使者は神ではないもの」で「世界に破滅をもたらす異界の使者」……。そして神族に伝わっている事は、もう一つ。
「神と黒曜の使者は、どちらも【異界より来たるもの】って事かしらね」
「……え?」
「ちょっとまって、それは初耳なんだけど」
ブラックの言葉に思わず頷く。
……てか、そもそも神族の言う神ってなんだ?
ラスターが崇めてた神様と同じものなんだろうか。
疑問符を頭に浮かべる俺達に、シアンさんは微笑みを絶やさずに目を細めた。
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