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「この者達は、【神域】の気がなくとも外で行動できる高い能力を持っているの。世界の【監視者】として、私の仕事を手伝って貰っているわ。ああ、言い忘れていたけど、私はその監視者を束ねて【世界協定】という組織で指揮を執っているの。世界が平穏であるようにと、千里眼で方々を見渡してね……さて、クロッコ。貴方が伝達係でしたね?」
シアンさんが優しく言うと、居並ぶブラック達の中から銀髪の男が一歩進み出て来た。美青年エルフだ。
イケメンという事で思わずちょっとイラッとしたが、ブラックは俺の比じゃなくイラッとしていたようで、クロッコと呼ばれた青年が出て来たと同時に舌打ちをしていた。おい、えげつないなお前。
「シアン様、確かに私がこの男との橋渡し役でございました」
「クロッコ、あなたどういう伝え方をしたの?」
「はい。この世界の平穏の為に、如何なる方法でもよろしいので始末するように、と。……別段、殺せとは言っておりませんが」
いやまあ、確かに「始末」って言う言葉に殺すって意味はないけどさあ。
そ知らぬ顔で言い切るクロッコに、今度はブラックが立ち上がる。
「良く言うね、お前の言い方は『殺せ』と言っているように聞こえたけど」
「そうでしたか? ふふ、申し訳ない。下賤な人族に丁寧な伝え方をしても、理解できるとは思えませんでしたので。特にこのブラックと言う男はね」
そう言うと、エルフたちの顔が俄かに動揺に歪んだ。
な、なんだ。ブラックってもしかしてエルフにも評判悪いの?
「あらあら……ごめんなさいね。この子は典型的な神族だから融通が利かなかったみたいで……。解ったわ、みんな下がって頂戴。……さて、色々行き違いが有って誤解が生まれたみたいね。ごめんなさい」
「行き違いで済むかなあ! 僕の覚悟返してくれる!?」
「あらまあ。怒らないで頂戴よ、子供のいう事に目くじら立てても仕方ないわよ」
「九百歳のアンタから見れば子供だろうが、あいつは八十歳だろうが!」
あっ、聞きたくない。年齢の話は聞きたくないです。
どうしても人間換算しちゃいたくなるから。
思わず耳を塞ぐけど、ブラックとシアンさんの言い合いは激しさを増す。
って言うか、ブラックが一方的に激昂してて、シアンさんがさらーっと受け流してるようにしか見えないけどね。
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