1.数週間あればスキルくらい増えるさ(震え声)

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  「なんで約束を果たして貰おうと思ったらその度に邪魔が入るんだろうね……折角宿に泊まっても疲れ切って寝ちゃうし移動時間考えたら無暗に襲えないし、その他諸々の事情で手が出せなかったし!!」 「あーもー煩いなっ! 良いじゃん、そのおかげで懐もけっこー潤ったし、馬車も貸して貰ったしさあ……っていうか無暗に襲うってテメェ」 「こうなったらラッタディアに到着するなりまた宿に……」 「入らない! まず先に【世界協定支部】に行って、シアンさんに会う約束を取り付けるって話しただろーが!」 「う、ううう……用事が憎い……」  ギリィと言わせんばかりに歯を噛み締めて涙を流すブラックをみつつ、俺はこの数週間を思い返した。うん、確かに色々あったなあ。  バラッカに入るなり【緊急招集】とかいうギルドの強制参加依頼に巻き込まれて集団でロバーウルフ退治に行ったり、その途中俺が何度もナンパされたせいかブラックが一人ずつ半殺しにしようとしてたり。  しかも、バラッカの次の街でも騒動が色々あって大変だったよなあ。  まあそのおかげで懐は潤ったし俺の薬も売れたし、ついでに俺は術の練習も出来て充実してはいたけど……。  でも本当、ハーモニックの人達にはまいった。  性にあけっぴろげな国なのか、それとも冒険者が多いからなのか、ハーモニックって国は男色イベントに事欠かない。  俺はラッキースケベの国だと思ってたけど、そうだよな。獣人娘や魔族のお姉さんが働くくらいリベラルな国なら、色々おおらかなんだよな、うん。  俺のケツ触るくらいは挨拶なんだろう。最初やられた時は思わず殴ってしまったが。っていうかブラックが思いっきり剣抜いてたが、それはともかく。  そんなだからブラックは余計にフラストレーションが溜まったようで、バラッカから逃げ出すように移動したときにはもうこの状態になっていた。事態を重く見た俺は、薬屋の鑑定で最高品と箔押しして貰った睡眠薬を使い、この数週間事なきを得て来たのだが……。 「まあ、街に到着するごとに面倒事に巻き込まれて、その都度疲れて寝るか睡眠薬で寝るかって続けてれば、そりゃ溜まるよな……」 「なんか言った?」 「な、なんでもないでーす」  慌てて取り繕い、俺は馬車を操ってるお爺さんに声をかけた。  
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