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「この黒の地域は総称して“空白の国”と呼ばれているわ。正確な資料が存在しない遺跡や、今まで探索されていなかった地域でね、冒険者が今まさに探検している場所なの。ここから幾つか見た事もない物が発掘されたって話もあるわ」
「見た事もないもの、ですか……」
「ええ。なら、もしかして黒曜の使者についての新たな事実や、転移の術についても何か手がかりが有るのでは……と思ってね。さっきも言ったけど、私達は魔族や人族の歴史についてはあまり干渉しないの。今でこそ神族は人族と協力しているけど……数十年前までは交流などなかったから、古代の人族の歴史を詳しく見ていた訳じゃないの。だから、黒曜の使者の研究をしてないとは言い切れない。なにせ、黒曜の使者は何度も出現した災厄ですからね」
なるほど。未知の世界にこそ新たな発見があるって事か。
可能性があるってんなら、行ってみる価値は充分にあるな。現状、俺が知りたい事の手掛かりは無いんだ。ならば手当たり次第に冒険するのも悪くは無い。
ファンタジー世界の古代遺跡には、ロストテクノロジーが眠ってるもんだ。
帰る方法は正直望み薄だけど、黒曜の使者の力をどう扱えばいいかの方法くらいは見つかるかも知れないしな。
それに、未踏の地や遺跡が有るってことは、ダンジョンが存在するって事だ!!
ダンジョン。それはゲーム好きにとっては心が疼く言葉である。
どうせなら楽しく冒険して、そこから帰る道をみつけるのもイイかも。
「それで……ツカサ君。早速なんだけど……いい場所があるのよ」
「え?」
にっこりと笑うシアンさんは、まるで聖母のようだった。
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