4.調査?そのまえに獣人娘だろうがァ!!

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   ラッタディアの飲み屋街。そこはまさしく桃源郷だ。  夕方近くになって灯される水琅石の街灯は道を明るく照らし、大通りに向かって扉を開く飲み屋や妖しいお店は、客を呼び込むかのように活気ある音でそぞろ歩く客を誘っている。  道に溢れる宣伝看板や呼び込み人を見ていると、繁華街ってのは俺の世界とそう変わらないもんだなと思い知らされる。  違う部分があるとすれば、ここはアラビアンな建物ばかりで……それでいて……いかがわしいお店は、俺みたいなガキでもウェルカムって所だけだ。  そう。ここは俺にとっても桃源郷の繁華街。  話を聞いた時から何度も何度も夢に見た、ファンタジー万歳のえっちな店が沢山ある場所なのだ!! 「ヒャッハー! ついについについに来たぞ夢の国! この飲み屋街にある猫耳の看板の店が俺の願いを叶えてくれる場所なわけね!?」  ブラック……いや、鬼の居ぬ間に大豪遊とはよく言ったもんだ。  ロクも寝かせて来たし、この日の為に溜めて来た軍資金もしっかり持った。  繁華街ではスリに出くわすって言うから、肌身離さず対策もばっちりだ。  さあ、いざ行かん! 夢のお店へ!! 「うおー、しっかし人が多いな」  ごったがえすって程じゃないけど、でも今まで旅してきた街から比べれば大盛況だ。歩いている人達の髪色も千差万別だし、俺みたいな黒髪もちらほらいる。  時々だけど、耳がちょっと尖ってたり魔族っぽい人もいた。  獣人もいるんだろうけど……みんな背が高すぎて見えねえ。  まあ男なんかどうでもいい。俺は獣人娘に会いたいのだ。  雑踏をかき分けて進み、飲み屋街の端の方まで来ると、やっとお目当ての看板が見えて来た。猫耳で、ピンク一色に染まった可愛らしい看板。あれだ、あれが俺が来たかった店だ! 「やった! ……って、わりかし人少ないな」  飲み屋街の入り口や中心に比べると、端の方は人が少ない。  っていうか、猫耳の店の周りには人がいなかった。  他の店の前には結構人がいたりするのに、なんでだろう。  入り口の前までやってくると、扉に妙な但し書きが張られているのに気付いた。 「うん……? なんじゃこりゃ」  
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