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但し書きには、こう書いてあった。
【ご入店する前に】
・貧弱な方、腕を折られても知りません
・下品な方、殴り飛ばされても知りません
・金の無い方、先に言って下さい
・差別主義者、殺す
以上の事をご留意の上、お入りください。
「…………世紀末乱世を再現するお店かな?」
この但し書き、上の二つは俺にガッチリ当て嵌まるんですけども。
俺、もしかして複雑骨折でお店の外に放り出される可能性あるのかな?
どう考えても危ないよね、危ない店だよね、ここ。
最後に「殺す」ってはっきり書いてあるよね。そりゃ人が近寄らないよね。
いいのこれ。お店として大丈夫なの。
「ど、どうしよう……でも、折角ここまで来て帰るのもなんだし、もしかしたら……もしかしたら、ちょっとした脅かしって可能性もあるし……!」
ええい悩んでても仕方ない!
俺は覚悟を決めて、店の扉を開けた。
ガチャ、と音がして――店内の怪しげな光が漏れ出してくる。
その紫の光の中に一歩踏み込むと。
「いらっしゃいませー!」
男の低い声による挨拶が、元気よく俺に放り投げられた。
一瞬、失敗したかと思ったが……
俺の目の前に広がる光景は、やはり天国だった!!
「いらっしゃいませ~!」
男の声に釣られるように、色んな席に座って接客をしていた女の子達が声を上げる。その女の子達の頭を見て、俺は感動に震えた。
「はっ、はぁああ……!! 良すぎるぅ……っ!」
いかにも大人のお店って感じの丸い箱みたいなイスとテーブル。
人があまりいない場末のスナックみたいな店にいるのは、多種多様な獣娘達だ。
猫耳犬耳キツネ耳、牛に馬に兎にと、スタンダードな耳はばっちり網羅。中には耳が尖った角が生えてる人もいて、魔族もちゃんと在籍しているっぽい。
しかもみんな可愛いか美人。俺は初めてこの美形の多い世界に感謝した。
「お客さん初めてですね、可愛い~! えへへ、いらっしゃいませ!」
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