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「お爺ちゃん、もうすぐ着く?」
「ああそうだよ。もう半時くらいでラッタディアに到着しますよって」
このお爺ちゃんは、ラッタディアに向かう途中で助けた御者さんだ。
盗賊に馬車を盗まれたというので、俺とブラックが盗賊をとっちめて馬車を返してあげたのだが、それの恩返しって事で、俺達を馬車で運んでくれている。勿論、その間もブラックは禁欲だ。
「ところでクグルギさん、ラッタディアに着くまえに教えておきたいんだがね」
「ん? なに?」
「ラッタディアではあんまり、曜術師だって言わねぇほうがいい。南の端と北の端は【気】が少ねぇせいか、曜術師が中々生まれなくってなあ。だもんで、うっかり日の曜術師って言うと、ほれ、おめえさんみたいな細っこい子だとすぐ攫われちまうよ。ライクネスの奴隷なんて比じゃねえくれぇ酷でえことされちまう」
ら、ライクネスの奴隷制度以上……?
青ざめた俺に、馬車馬のヒッポちゃんがムヒーと鳴く。
「まあブラックさんは大丈夫だろうけんども、あんたはくれぐれも気を付けてな」
のんびりしたお爺ちゃんの言葉に、ぎこちなく頷く。
えっと……じゃあ、今回も木の曜術師一本で行った方が良い……かな?
俺が今使える術は、アコール卿国の時よりもかなり増えている。
戦闘を繰り返したり薬を作ったりする内に、俺もかなりスキルアップしたのだ。それに、わりかしアイテムも増えた。
あ、そうだ。どうせなら今の内に確認しておこうかな。
「ブラック、ちょっと馬車が狭くなるぞ」
「えっ、また取り出すの? まあいいけどさぁ……そのスクナビ・ナッツって奴、便利だけど出す時迷惑すぎない……?」
「そりゃそうなんだけどさ。宿を決める前に色々出歩くんだし、無暗に出すわけに行かないだろ? なら、今の内に整理しとかないと」
腰に付けたポーチを開きつつ、俺は自分の能力も改めて確認した。
今の俺は、六つの曜術と三つの気の付加術が使える。
気の付加術は、物を浮かせて操る初級術の【フロート】と、同じく初級術である弱風を作り出す【ブリーズ】、そして新たに覚えたのが、跳躍や走る速度を高める【ラピッド】だ!
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