1.数週間あればスキルくらい増えるさ(震え声)

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  「お爺ちゃん、もうすぐ着く?」 「ああそうだよ。もう半時くらいでラッタディアに到着しますよって」  このお爺ちゃんは、ラッタディアに向かう途中で助けた御者さんだ。  盗賊に馬車を盗まれたというので、俺とブラックが盗賊をとっちめて馬車を返してあげたのだが、それの恩返しって事で、俺達を馬車で運んでくれている。勿論、その間もブラックは禁欲だ。 「ところでクグルギさん、ラッタディアに着くまえに教えておきたいんだがね」 「ん? なに?」 「ラッタディアではあんまり、曜術師だって言わねぇほうがいい。南の端と北の端は【気】が少ねぇせいか、曜術師が中々生まれなくってなあ。だもんで、うっかり日の曜術師って言うと、ほれ、おめえさんみたいな細っこい子だとすぐ攫われちまうよ。ライクネスの奴隷なんて比じゃねえくれぇ酷でえことされちまう」  ら、ライクネスの奴隷制度以上……?  青ざめた俺に、馬車馬のヒッポちゃんがムヒーと鳴く。 「まあブラックさんは大丈夫だろうけんども、あんたはくれぐれも気を付けてな」  のんびりしたお爺ちゃんの言葉に、ぎこちなく頷く。  えっと……じゃあ、今回も木の曜術師一本で行った方が良い……かな?  俺が今使える術は、アコール卿国の時よりもかなり増えている。  戦闘を繰り返したり薬を作ったりする内に、俺もかなりスキルアップしたのだ。それに、わりかしアイテムも増えた。  あ、そうだ。どうせなら今の内に確認しておこうかな。 「ブラック、ちょっと馬車が狭くなるぞ」 「えっ、また取り出すの? まあいいけどさぁ……そのスクナビ・ナッツって奴、便利だけど出す時迷惑すぎない……?」 「そりゃそうなんだけどさ。宿を決める前に色々出歩くんだし、無暗に出すわけに行かないだろ? なら、今の内に整理しとかないと」  腰に付けたポーチを開きつつ、俺は自分の能力も改めて確認した。  今の俺は、六つの曜術と三つの気の付加術が使える。  気の付加術は、物を浮かせて操る初級術の【フロート】と、同じく初級術である弱風を作り出す【ブリーズ】、そして新たに覚えたのが、跳躍や走る速度を高める【ラピッド】だ!  
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