山ガール

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 起きるともう朝になっていました。寒さは弱まっていましたが外は依然猛吹雪でとても病気のHと一緒に下山出来る状態ではありませんでした。彼女はストーブの火を使って簡単な料理を造ってくれました。私達はもう食料を持っていなかったので本当に助かったと思いました。結局その日も夜まで吹雪はやまず、また小屋で寝ることになりました。そして次の日も、その次の日も、吹雪は止みませんでした。けれど、信じられないと思いますが、昼になると彼女は食料を探してくると言って外に出て行くのです。初めは危ないからと言って止めましたが、彼女は平気だと言ってニコニコしながら出て行きました。そして米や野菜を持って帰ってくるのです。  こんな具合ですから私も少々安心していました。ところがHの体調は良くなるどころかどんどん悪化して、小屋で過ごし始めて五日目、とうとうHは死にました。私は彼を小屋から少し離れた場所に埋めたんです。外は依然ひどい吹雪でしたが、私と彼女だけなら下山できるかもしれないと思ったので彼女に山を降りようと提案しました。しかし彼女は『それは出来ない』と言うのです。結局私はその小屋でしばらく彼女と一緒に暮らしました。そんな山小屋で人里離れて暮らすなんて馬鹿だと思われるかもしれませんけど、私は、彼女の事が好きになってしまったのです。たった数日一緒にいただけなのに、愛してしまったのです。他のもの全てを捨てても彼女を選ぼうと思ったのです。  けれど段々と暖かくなり雪が融け始めると彼女は『また来年の冬に会いましょう。』とだけ言って突然居なくなってしまったのです。私はそこで初めて彼女が人間ではないのだと分かりました。けれど、彼女が人間であれ、他の何かであれそんなことは関係ありません。私は彼女を愛しているのです。」     
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