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この話を残したのは誰だと思うね。男は死んでいるのだから、残ったのはもう一人の女しか居ない。これは私の勝手な想像だけどね、その女が男を殺したんだよ。それが意図的だったのか、何かの誤りかは分からないけどね。例えば屋根の雪下ろしをしていて誤って大きなつららを落としてしまって男に刺さってしまったとしよう。女は自分が夫を殺してしまったとは思いたくない。そこで、世間を納得させる為、そして自分自身を納得させる為に、つらら女の話を作ったんじゃないかな。
妖怪なんてものは存外こういう人間の言い訳の為に生み出されるモノが多いんだよ。それから願望と勘違い。こういったものが混じって妖怪を生み出すんだ。雪女の話だってそうじゃないかな。老いた樵と若い樵の親子が山小屋で寒さをしのいでいた。二人で交代で火の番をしようなんて言ってたんじゃないかな。若い息子が番をしている時についウトウトして寝てしまった。ハッと気付くと火が消えており、若い自分は何とか助かったが老いた父親は死んでしまった。勿論だが殺したくて殺したんじゃない。息子は自分が父親を殺したようなものだと後悔しながらも、どこかで自分を納得させたかった。
さて、若い男が山小屋なんて辺ぴな場所に父親と二人きりで居る時に見る夢といったらどんな夢だろうかね。もし今ここに若い女が迷ってやって来ないか。それが思いの外美しい女だったらいいのに。なんて事じゃないかな。こんな夢をウトウト見ていた。しかし目が覚めて見れば、たった一人の父親が死んでいる。自分への言い訳と願望がごちゃ混ぜになって、雪女が生まれたんじゃないかな。
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