第一話

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(えつ)、見つかったぞ」 「おっ?マジ?サンキュー!」 少し離れたところから別の人の声が聞こえてもう一人いた事に今気付いた。 駆け足でこちらに近付きネックレスを受け取る。 嬉しそうに笑うもう一人の人と彼を交互に見る。 友人なのだろうか、面白いくらい全く正反対だなと眺める。 銀髪の人はクールな感じで誰も近寄らせない冷たい雰囲気があったが、もう一人の人は明るく話しやすそうな雰囲気だ。 茶髪で髪の横にヘアピンを付けていて、銀髪の人と負けず劣らずの美形だけどちょっと軽そうな感じがする。 制服もぴっちり着る銀髪の人とは違い緩く着崩しているのも原因だろう。 しかし二人が並ぶと絵画のようでとても様になっていた。 茶髪の人はネックレスを首に掛け直して行こうと思って一歩踏み出したところで俺の存在に気付いた顔をしていた。 「あれ?君誰?(ひびき)の知り合い?」 「……違う、泥棒?」 「違います違います!ネックレスを拾っただけですから!」 また泥棒だと言われてしまい必死に首を横に振った。 茶髪の人は自分から聞いたのに興味なさそうに「へぇ…ありがとね!」とお礼を言った。 ニッと眩しい笑顔で微笑まれてちょっとドキッとした。 ……ちょっと、ちょっとだけだ…今まで見たαの中で二人は別格のかっこよさだと思った。 二人はもうこの場所に用がないから行こうと歩き出した。 俺も昼飯食べてないし、まだ食堂って空いてるのかなと思いながら歩こうと一歩踏み出した。 すると美形二人を前にした緊張が解けたのと朝食の事を思い出し、何も食べていなくて空腹で足がもつれた。 体勢を立て直す事も出来ずとっさに目の前にあったものを掴んだ。 「わっ!」 「……?」 カタンと音がして、俺の身体は地面に倒れる事はなかった。
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