274人が本棚に入れています
本棚に追加
/74ページ
この世界には男女とは別に性が存在していた。
それがα、β、Ωという名の性だ。
その中でもαとΩは希少で特別な存在とされていた。
αは才色兼備のエリートでありカーストトップに君臨する言わば絶対王者の風貌があった。
それに対してΩはカースト最下位で容姿も能力も劣っている。
それに加えΩはヒートという男を惑わす発情期があり男のΩでも妊娠してしまうという。
男としての価値を失われつつあるΩは絶対王者であるαに逆らう事が出来ない。
そしてαがΩを襲う事件が多発したが、Ωのヒートのせいだと言い訳すれば全てΩが悪いと言われてしまう理不尽な世の中。
生まれてくるならαなんて贅沢は言わないから何の特徴もないが安全なβであってほしいと親は子にそう望んでいた。
Ωは一番人口が少ない性でその次はα、そしてβが一番人口が多い。
今まで混同していた学校で何度か性犯罪が行われた。
それは生徒だけではなく、先生までΩいじめをしていて深刻な社会問題になった。
とはいえニュースのコメンテーター達は議論をするわけではなく「ヒートのせいだ」「Ωが悪い」とそう言っているだけだった。
だからΩ達は結託して抗議デモを始めたりしていた。
その甲斐あってか、5年もの抗議を続けてやっと国会議員達が重い腰を上げた。
そして性によって学校を分ける事で国民を納得させた。
社会に出たら性など混同は当たり前になってしまうが、αは社会に出た後のケアをΩのためにする気はないからその後はまだΩに優しくない世界だった。
それでも子供を一時的でもαから守れるならと親達は喜んだ。
ここまで言うとαが最低最悪のクズみたいだがαが全てそうではない。
Ωに冷たいαだって、所詮はα…妻にΩは当たり前だった。
しかし自分の妻以外のΩに興味はないαは、他のΩがどうなろうと知った事ではない…家族以外にクズだった。
Ωはαに惹かれ、αもまたΩに惹かれる…そして運命の番になる。
Ωのうなじをαが噛めば嫌いな相手でも強制的に番になってしまう。
その番は魂で繋がっていて死ぬまで消える事はないだろう。
つくづくΩには人権も何もない悲しい性なんだ。
俺はΩに偏見はない、いつか運命の番になるわけだし…番と同じ性のΩは皆家族みたいなものだと思ってる。
…だけど、そう思っている俺みたいなαはこの世界には珍しい。
俺の家は代々αばかりが生まれる優秀な家系だった。
だからといって一般的のαのように金持ちとかそういうのではなく普通の家庭だった。
小学校の健康診断の中に性を分ける血液検査があった。
子供本人が知るより先に親に検査結果の封筒が渡され、その後に子供に親から聞かされる。
俺と双子の弟は母に検査結果の封筒を渡した、勿論中身は見ていない…見る必要がないからだ。
最初のコメントを投稿しよう!