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まるでスローモーションのように脳内で響いた。
「超万能ビ・タ・ミ・ン・剤」
「…サプリ?」
俺がそう言うと、茶髪の人はうんうんと頷いた。
ビタミン剤…まさかの抑制剤とは違うもの、でも見た目は完全に抑制剤だ。
その時俺は銀髪の人が仲間じゃなかった事へのショックより別の事を考えていた。
本当にこんなそっくりなものがこの世にあるというなら…もしかしてコレ、使えるんじゃないか?
譲に薬がバレた、でもサプリだと言い張れば本当に存在する薬だし…誤魔化せる。
友人に嘘を付くのは心は痛いが…誰にもバレたくないんだ。
卒業したら本当の事を話そう、それまではごめんと心の中で謝る。
俺は薬の詳細を聞くために銀髪の人に詰め寄る。
「何処で手に入りますか!?」
「え?君も偏食なの?ちゃんと野菜とか食べないと……サプリは薬局なら何処にでもあるよ」
「ありがとうございます」
答えてくれた茶髪の人にお礼を言う、このタイミングで出会えるなんて本当に神様のような人だ。
抑制剤と間違えそうだから買わないけど何処にでもあるなら俺が持ってても違和感ないだろう。
これで何とか譲の疑問を逃れる手が見つかった。
でも、警戒を怠らない…またハプニングが起きるか分からないから警戒するに限る。
茶髪の人は俺が安心している顔をしていたからか不思議な顔をする。
そして忠告するように少し低い声で俺に囁いた。
「でも覚悟しといてよ、ビタミン剤持ってるとΩだって勘違いされるから…こいつも最初は大変だったからねぇ」
ちらっと茶髪の人は銀髪の人を見るが銀髪の人は気にした様子はない。
俺以外の何人かにもΩだって思われていたのだろう、だから慣れた様子だったのかな。
なんでこの薬を開発した人は抑制剤と同じ色の薬にしたのか謎だ。
薬って同じような形が多いから間違えやすいよなと今はそれに感謝していた。
俺は二人にもう一度お礼を口にしてその場を後にした。
手にはズボンのポケットに入れていたスマホが握られていた。
譲ともう一度話し合うなら今すぐがいいだろう。
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