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スマホの電源を押し、暗かった画面に光が写る。
そしてお知らせを見てつい顔がヒクついてしまう。
そこに写し出された着信を知らせる数字、ぴったり15件と表示されていた。
こんなに短時間にいろんな人から電話が来るわけがない。
電話のアイコンに触れると写し出される登録した名前の着歴。
やはり全て譲からの着信だった、こんなに心配してくれてたんだ。
あんな態度取ってしまったし、申し訳なく思った。
そう思っていたらバイブレーションが手のひらで響いた。
写し出された名前を見て俺は急いで画面をスライドして通話に出た。
耳元にスマホを当てるとさっきまで一緒にいたのに何だか懐かしい声が聞こえた。
『良かったぁ!やっと繋がった!何処に行ったのか心配したんだぞ!』
「…その、ごめん」
『まぁいいや、今何処にいるんだ?』
「裏庭から校舎に戻るところ」
俺がそう言うと譲は『裏庭かぁ…そこは探してなかった』と残念そうな声が聞こえた。
もしかして、俺が譲から逃げた時からずっと探してくれてたのか?
譲に薬を見られた時、てっきり譲はΩを差別している人かと勝手に思い込んでいた。
今朝出会って付き合いも今日だけだったけど譲は素直でいい奴だって分かっていたのになと反省する。
でも、素直だからこそ…この秘密を共に共有出来ないとそう思った。
俺以上に譲は誰に対しても嘘が下手な気がした。
それにあまりにも重いこの秘密を背負わせたくはなかった。
俺は譲と仲直りするために食堂で待ち合わせをした。
今の時間なら食堂に人は少ないだろうと思った。
上級生達は授業が始まる時間だし、こんな遅くに食べに来る生徒なんて俺みたいなよっぽどの理由じゃなければ来ないだろう。
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