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俺は重い足を必死に動かしながら楽しみにしていた筈の食堂に向かって急いだ。
校舎に戻ってきて、壁に貼られた地図を頼りに歩き出す。
そこで食堂と書かれたホテルにあるレストランのようなお洒落な外観の食堂があった。
さすがに金持ちばかりが通うエリート学校の食堂が定食屋みたいな感じだとは思ってはいないが、さすがにドレスコードなしで入って大丈夫か不安になってしまう。
まぁ学校の食堂に制服しかありえないんだけどな。
食堂のドアを開くと天井にぶら下がる大きなシャンデリアがお出迎えした。
クラシックのBGMが流れてリラックスして食事が楽しめるだろう。
俺みたいなどんよりした空気の奴なんて一人もいないだろう。
思った通り食堂内にはほとんど人がいなくて従業員と食後の雑談に花を咲かせている生徒くらいだった。
俺もちょっとだけ音楽に癒されたい気分だった。
「…蒼?」
恐る恐る俺を呼ぶ控えめな声が何処からか聞こえた。
周りを見渡して声の主を探していて、その人物はすぐに見つかった。
まだ戸惑いを隠せない様子で俺の顔色を伺う譲が俺にゆっくりと近付いてきた。
俺はなるべく動揺を悟られないように譲に手を振った。
大丈夫だ、思い出せ…銀髪の人の完璧なポーカーフェイスを…
少しでも俺が戸惑えば作戦がバレてしまうから何でもない事のように振る舞うんだ。
「譲、心配かけてごめんな」
「と、とりあえず座ろうぜ!」
譲と近くにあった椅子に座る、注文はテーブルの横にタブレットを操作して好きな料理を選択して出来たらウェイターが料理を運んでくるシステムみたいで注文をしている生徒を眺めて見よう見まねで俺達もメニューを開く。
…やはりどれも値段が高い、政府も払うのは学費や教材費のみみたいだし食費までは払ってくれないよな。
そうなると仕送りを考えてやっぱり一番安いものを…
真剣な顔で悩む俺を譲はメニューを見ず眺めていた。
「蒼…」と声が聞こえてメニュー表から顔を上げる。
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