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正直こんな事で騙せるか分からない。
でも譲は頷いて納得している様子だった。
「なるほどね、それならそうと早く言ってくれたら良かったのに!俺もΩだって決めてつけてごめんな、ちょっと考えたら分かるよな…俺が薬を持ってた時蒼…気にしてない様子だったし…Ωが抑制剤を知らないなんてあり得ないよな!」
譲はいろいろと繋がったとスッキリした顔をしていた。
どうやら俺の態度が譲を信用させる材料になったそうだ。
俺がΩを知らなかった、あの時αとして譲を見ていたからだったなんて皮肉だな。
でもその結果何とか誤魔化せて良かった。
その時ちょうど頼んでいた料理がウェイターの手によって運ばれてきた。
譲は俺を探し回り空腹だと分厚いお肉のステーキを頼んでいた。
安いだけあって俺の焼肉丼は少々小ぶりだ。
これでも千円したからきっと肉はいい肉を使っているのだろう。
譲にいただぎますと言い箸を持ち一口サイズに持ち上げて口に運ぶ。
ジューシーな肉の旨味と絶妙な甘辛いタレが融合して頬が緩む。
「蒼って美味そうに食うなぁ」
「だって本当に美味いからな」
しかしきっとコレが食べれるのは今日までだ。
正直一食に千円は高すぎる。
確か寮のパンフレットには寮の部屋には自炊用のキッチンがあった筈だ。
今度はお弁当でも作ろうとそう決意した。
食事も終わり校舎を出ると外はすっかり夕焼け空になっていた。
上級生達も授業が終わり部活に行く者や寮に帰る者など様々な人達で外にはいっぱい人がいた。
「あ、またいる」
譲はある場所を見てそう呟いた。
譲の視線を追い苦笑いした。
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