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寮は古風な屋敷のような外観だった。
草のツタが壁をよじ登るように伸びていてカラスがコーラスを奏でている。
古びた感じも相まって幽霊の一人や二人居ても可笑しくはない。
つまり雰囲気からして今からお化け屋敷に入りますと言ったような雰囲気だった。
俺、お化けとか雷とか本当に無理なんだって…今でさえ一人暮らしで夜電気消して眠れるか不安なのに…
隣を見ると譲も怖いのか不安そうな顔をしていた。
「い、行くか」
「うん」
「手、繋いだら平気になるかも」
「…うん」
譲に言われお互いの手をしっかりと握った。
どちらのか分からない手の震えを感じながら怪しい屋敷に向かって一歩一歩確実に歩いて行く。
校舎の裏の並木道の先に寮があるとパンフレットに書いていた筈だ、譲に確認したら同じ答えだったから確実だろう。
だからきっと、この屋敷に間違いないだろう。
中に入ると外観ほど古さはなく、広いロビーには何人か生徒達がソファーに座って話していたり歩く姿が見えた。
大理石の床に学園より大きなシャンデリアが天井にぶら下がっていた。
窓はステンドグラスになっていて奥に扉や廊下が見える。
さっきまでの不安は何処へやら、ワクワクした気持ちで周りを見渡す。
譲もそわそわして今すぐにでも探検に出かけたそうな雰囲気だった。
「蒼!どうする?何処から行く?」
「まずは部屋を見たいかな」
「そうだな、えーっとどうやって部屋分かるんだ?」
「もしもし君達」
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