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俺達はαの一族だからα、そう信じて疑わなかった。
母は父に見せてから俺達に言うと言って部屋の奥に行ってしまった。
焦らさなくても分かっているのにと不思議に思いながら俺は気にしなかった。
そして両親から聞かされ、俺はこの日からαとなったんだ。
小学校はまだ皆一緒だから混同した学校だったけど中学からは専門の性の学校に通う事が義務付けられていた。
勿論俺と弟は当たり前のようにαの学校に通っていた。
でも何故か家に帰ると母が「おかえり」と出迎える前に「大丈夫だった!?」と聞いてきた。
「なにが?」と聞くとホッとした顔をして何でもないと言った。
俺は自分の持病の事だろうかと気にしていなかった。
俺がαだと分かったその日、母は俺に持病があると話した。
命に関わるものではないけど、貧血とめまいを起こすからと青と白のカプセルの薬を白いプラスチックの薬入れに入れて持たせてくれた。
誰にも見せちゃいけない、絶対にと言われていた…よく分からなかったけど母の顔はとても真剣で頷くしかなかった。
毎日一錠薬を飲み込み、学校に向かうのが俺の当たり前だった。
αは才色兼備で美形揃いで俺の弟もそれだった。
なのに俺の容姿は正直普通でβとよく勘違いされていた。
不思議だな、なんで俺は普通とは違うんだろうか。
中学を卒業したあの日もそんな事を考えていた。
勉強も運動も平均だった俺だけど理想のαがいた。
キラキラと輝く髪に、神の化身のような人間離れした超絶美形。
当時小学校でまだ血液検査を受けていない時だった俺だったが全身駆け上がる熱を今でも忘れないだろう。
今思えば、あれは憧れからくる興奮だったのだろうと思う。
Ωならヒートを真っ先に疑うだろうが俺はαだしあり得ない。
とにかく俺は男か女か分からなかったその人に長年憧れを抱いていた。
しかしその人と会ったのは道端で見たそれだけだった。
ちょっと歳が上くらいだから学校も一緒になる奇跡は……起きなかった。
俺が通った中学はαの学校だが田舎くさい場所だった、あんな凄いαがいるわけないよな。
一度しか見ていないその顔は今では薄ぼんやりとしか思い出せなくなっていた、辛うじて髪が銀…いや黒?…あれ?
人間の記憶力はここまで当てにならなくなるのか。
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