第一話

34/39
前へ
/74ページ
次へ
譲は五階にある施設を見て目を輝かせた。 「すげー!室内プールだって!行こうぜ!」 「…俺はいいよ」 「えー、なんでー」 不満そうに頬を膨らませる譲に苦笑いする。 Ωだからという理由はない、ヒートの心配はあるがあまりこそこそしていたら怪しまれるしな。 …そうじゃない、そうじゃないんだ譲分かってくれ。 俺は…重度のかなづちなんだ。 水を顔に浸すのすら無理、洗顔とはわけが違う…溺れる恐怖を思い出し身震いする。 それを説明すると譲は「俺が教えてやるよ!」とやる気に満ちた顔をしていた。 悪いけど俺がずっと克服出来ない原因を作った小学生の頃の体育の先生のプールの時間であまり思い出したくない恐怖のスパルタ授業を受け見事に教えられるのも怖くなった。 ただ入るだけならいいが、それだと風呂と変わらないからやっぱりプールはいいかな。 「行きたいなら譲行ってこいよ、俺待ってるから」 「…つまんないからいいや」 そう言って譲はまた地図を開いた。 五階の半分はプールみたいで凄い金掛けてるなぁと思って、プールの横にトレーニングジムがあるようだ。 譲はこれなら?と目を輝かせて俺を見てくる。 俺が頷くと早く行こうと言わんばかりに先頭を歩く。 Ωの男は女と同じ、もしくはそれ以下の力しかない。 もしもの事を考えてちょっと鍛えた方がいいような気がした。 階段を上がると上級生達が多くいた。 ジムとプールの他にコンビニとか温室があった。 これは一日で全て回れそうにないな。 スポーツジムとシンプルに書かれた看板の下の自動ドアをくぐる。 するとそこには広々とした空間が広がっていた。 いろんな器具があり、がっちりした人達が大半を占めていて爽やかな汗を流していた。 「すげー…」 「あ、あぁ」 「あれ?見ない顔だね、何年生?」
/74ページ

最初のコメントを投稿しよう!

274人が本棚に入れています
本棚に追加