第二話

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譲が預かっていたんだよな、不在だったから譲が置いてったのだろうか。 とりあえずビニール袋をドアノブから外し中に入る。 人を呼ぶなんて思ってなかったから茶菓子とか用意してない。 「…えっと、何もお構いできませんが…」 「それはいいが、早く目を冷やした方がいい」 「え?目?」 「赤いぞ」 そう言われ気付いた、さっき泣いていたからだろうか。 ただでさえ凡顔なのに不細工寄りになったら明日学校行った時に譲に心配掛けるよな。 俺は会長をリビングのソファーに座って待って貰い、備え付き冷蔵庫を開けて何も入っていない中に買ってきたものを詰め込む。 すっかり食欲がなくなってしまった、夕飯に食べようと冷蔵庫を閉めてダンボールを開けて一ヶ月ぶんの抑制剤の袋を取り出し一粒口の中に放り込んだ。 これで何とか今日は大丈夫だろうとホッとした。 買ってきたお茶のペットボトルの蓋を開けて二人分のコップに注ぎ、会長のいるところに持っていきテーブルに置く。 俺はついでに水に濡らしちょっと重たくなったタオルを目元に当てた。 冷たくて気持ちいい……やっと普通に戻ったと安心していた。 チラッとタオルの隙間から見ると会長がこちらをガン見していたからびっくりしてタオルで顔を隠す。 「あの…俺、退学ですか?」 「…は?」 「いやだってαの学園にΩとか変でしょ」 「そう思うなら何故入学したんだ?」 俺は聞きたかった事を会長に聞いた、確かにごもっともです。 でも部外者に政府の話とか出来ないし、どう言ったら納得するだろうかと悩む。 悩んでも今のこの状況があり得ないからどう言っても嘘っぽくなる。 会長は悩む俺を見て「学園側がお前がΩだと知って入学させたなら別に俺からは何も言わない」と一言それだけいい、お茶を一口飲んだ。 もしかしたら会長、俺がΩだって誰かに言うかもと思っていた自分が本当に嫌な奴だなと反省した。 この人は俺の憧れるとても安心出来るαの中のαなのに… 「俺、Ωだってバレたくないんです…変な事に巻き込んでしまいごめんなさい」 「別に巻き込まれたとは思わない、ヒートさえどうにかすれば何とかなるだろ」 他人事のように話す会長に深刻さはなくて、俺もホッと一安心した。 そのくらい無関心の方が俺も緊張しなくていい。 不安はなくなり一息つき、お茶を喉に流し込む。 少しの間、不思議な空気が部屋を包み込み沈黙が訪れた。 俺がどうしても聞きたかったのはここまでだからこれからの事は考えていない。 滅多に話せない人みたいだし、どうせなら疑問に思っている事を聞こう。 はっきりしてる人だから答えたくない質問には答えないだろう。 「会長って運命の番っているんですか?あ、もしかして昨日門前にいたあの中に…」 「…あぁ、たぶん」
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