第二話

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その話前聞いていたら信じていなかったかもしれないが、少し心当たりがあった。 俺がヒートしていた時、会長の匂いを嗅いだら悪化した。 あの時はただαの匂いだからと思っていたが、普通のΩならヒートが悪化する事はない…きっとあの時の事なのだろう。 ヤバい、この人に近付いてはいけないとジリジリと離れる。 αのフェロモンは勿論あるし、それがΩを引き寄せる事も知っているが…まさかヒートを起こす強すぎるフェロモンが常に出る人は初耳だ。 もし昔のまま学校がα、β、Ωが通ってたらヒートテロみたいになっていたような気がする。 今はこの学園にはΩは一人、俺だけが危ないんだけどな。 「…もしかして副会長も、ですか?」 「悦か?悦は俺の逆だ」 「……逆?」 「アイツはヒートの匂いが効かないんだ、だから花の匂いと同じでいい匂いしか感じない」 ヒートが効かないα、これも特殊なαだと初めて聞いた。 世の中にはまだまだ発見されていないいろんな人がいるんだな。 でも会長も俺のヒートに無反応じゃなかったか? その疑問を言うと会長は「俺は鈍いだけで効かないわけじゃない」と涼しげな顔でそう言った。 そうなのか、でも俺には全く効いていないように思えたが…まぁそのおかげで会長がヒートに惑わされた獣みたいに理性がなくならなくて良かったけど。 お茶を全部飲み干して俺に「ごちそうさま」と言い、会長は立ち上がった。 「じゃあ俺は行く、悦に仕事押し付けて出て来てしまったからな」 「今日はご迷惑掛けてごめんなさい、ありがとうございます」 「………」 「…会長?」 「…響」 「え…?」 「俺の名前、響だ」 「……えっと、響…先輩?」 そう言うと響先輩は満足そうな顔をして玄関に向かった。 ずっと呼んでいたが会長呼びが気に入らなかったのだろうか。 苗字を名乗らなかったからつい下の名前で読んでしまったが良かったのかな。 俺がΩだってバレたり他のΩの響先輩ファンの人に何されるか分からずますますαを演じなくてはと硬い決意を抱いた。 …あ、αにもファンがいるんだっけ…なるべく響先輩には会わないようにしよう、生徒会長だし滅多に会わないだろうし… 秘密を知ったαと仲良くなった、無害そうだし…まぁ大丈夫だろう。 響先輩がいなくなり、部屋が一気に静かになった。 寮に持ち込んでまで生徒会の仕事かぁ、大変だな。 ソファーに寝転がり目を閉じると今日の出来事が思い出される。 早速Ωだとバレてしまって先が思いやられるな。
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