第一話

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偏差値80超えの超エリート名門私立高校月岡学園。 男女共学校だが生徒教師などは全てαのまさにβ、Ωの憧れの学園だ。 その証拠に普段は怖くてαだらけの学校に見る影もないΩの学校の制服の子がチラチラといる。 ……いや、さすがにΩがいない学校なのに居すぎじゃないか? なんでこんなにΩの生徒がαの学校の門を覗き込んでいるんだ? その場に溶け込みすぎて一瞬αかと思ってしまった。 Ωは自分のうなじをαに噛まれないように首輪を付けている、だからΩは見れば分かる。 立ち止まり驚くのは俺と同じ紺の真新しい制服に身を包んだ生徒だ。 上級生らしき生徒は慣れた行動なのかΩの生徒を無視して門をくぐっていく。 俺も行こうと歩きだしたところで背中に強烈な衝撃が加わった。 「おっはよ!俺!古賀(こが)(ゆずる)よろしく!良かったら友達になってね!」 「………」 「あれ、なんでそんなところで寝てるの?」 「君が俺に体当たりしたからじゃないのかな」 古賀と名乗った男は俺に謝りながら助け起こしてくれた。 顔面から地面に激突したからか顔が痛い…特に鼻が… 古賀は怒られた犬のようにシュンと反省していたから怒るのを止めた。 反省してるし、古賀は友達がほしくて少し力加減が強すぎただけだと思う事にした。 俺も不安だったし、古賀の気持ち分からなくはない。 制服に付いた砂を払い、古賀に手を差し出した。 「立花(たちばな)(そう)、よろしくな古賀」 「譲でいいって!俺も蒼って呼ぶし!」 「…そ、そうか」 二パッと満面の笑みで笑う譲に俺も自然と笑みが出来る。 古賀はまだ沢山いるΩの集団を不思議そうに眺めていた。 中学の頃はこんな事なかった…あの子達、自分の学校はいいのだろうか… αの学校なんて珍しくもないのに、まぁここはその中でも別格だが… それともこの学校に運命の番でもいるのだろうか。 ヒートが発生する思春期の頃から番を作る人も珍しくないからそれなんだろう。 古賀はあの子可愛い、あの子も可愛いと眺めていた…番探しか…お盛んだな。 俺は永遠を共にする番だ、ゆっくりじっくり人生をかけて探したい。 「古賀は知ってるのか?Ωがこんなに集まってる理由」 「近くにΩの学校があるからじゃないの?」 「えっ!?いいのかそれ?」 古賀の話によると近くと言ってもバス停二つ分離れているところにΩの学校があるらしい。 法律では学校を分けるだけで近くに建てちゃいけない法律はない。 しかしそれだといつ問題が起きるか分からないではないのか?しかも何故か被害者になりえるであろうΩがこんなに沢山…意味が分からない。 この月岡学園はそれなりの身分が高い生徒が多く通っているが、ヒートのΩを前にしたαの理性はとても脆いものだとテレビでやっていた。 俺もあんな獣みたいになるのかと怖くなっていたな、昔は… でも運命の番が見つかればその番以外のヒートは効かないと知りホッとした記憶がある。
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