第二話

12/35
前へ
/74ページ
次へ
あれは確か……えーっと、どっかで会った誰かだ。 しかしあの匂いは…Ωの匂いではなかったのか? 近付くΩは皆ヒートしていたからよく嗅いでいた、間違いない。 どうしてαからΩの匂いなんて………もしかしてアイツ… そう思っていたら誰かが近付く話し声が聞こえた。 考えてる暇はない、とにかく困っているなら助けるのも生徒会長の務めだ。 俺はそいつの腕を掴んで近くの倉庫にそいつを押し込んだ。 小さく息を吐く…ずっと溜めていたのか、少し強いな…あまりヒートの匂いが効かない俺でさえちょっとヤバい。 あまり顔には出ないがヒートに包まれながらそんな事を考えていた。 しかし何故Ωがここにいる?周りを騙せても学園までは無理だろう、αである書類を提示する事は学園で義務付けられている。 ならば学園公認か、だったら俺がなにかいう事はないな。 それよりも早くヒートを止めないとヤバいかもしれない。 倉庫の外が騒がしい、きっとヒートのΩを探しているのだろう。 しかしこのΩは怯えるばかりで全然ヒートを抑えようとしていない。 一瞬番を探しているのかと思ったが、それだったらこんな風にはならないか。 とりあえずやり方を教えて誰かがいたらやりづらいだろうと俺は外に出た。 「あっ、響様!こちらでΩのヒートの匂いがしたと思うんですが…」 「…いるわけないだろ」 「しっ、失礼しました!」 いつもより声を低くして言うと、慌てて走り去っていき背中を眺める。 早く匂いが消えないものか、いつまでもここにいたら不自然だ。 そしてどのくらい待っていただろうか、恐る恐る倉庫のドアが開いた。 やっと匂いが落ち着いたなとΩ生徒の方を振り向いて驚いた。 目元が赤くなっていた、ずっと泣いていたのか? ……そんなに激しくしたのか、ヒートはよく分からないが大変そうだな。 またヒート騒ぎになったら困るから部屋の前まで一緒に向かう。 悦には少し待ってもらおう、いつも生徒会の集まりの時サボるからたまにはいいだろう。 部屋に近付いた時にΩ生徒が話をしたいと言ってきた。 まぁ少しくらいならいいだろうと思いお邪魔させてもらう事になった。
/74ページ

最初のコメントを投稿しよう!

274人が本棚に入れています
本棚に追加