第二話

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※立花蒼視点 翌朝、のそりと重たい身体を必死に動かし起き上がる。 気のせいだろうか、くまのぬいぐるみが俺を哀れんで見ているように見えた。 スマホで譲に今日は学校に行くとメッセージを打ちベッドから出る。 欠伸をしながら寝室を出て台所に向かうと昨日出しっぱなしにしていた薬があった。 今日のぶんはまだだからそれを飲もうと伸ばした手を止める。 そういえば、なんで譲…俺に荷物が届いたって知ってたんだ? 言われないかぎり管理人が譲に言う筈ないよな。 考えれば考えるほど不思議で、その事も譲に聞いてみよう。 そう思い袋の中から薬を一粒取り出して口に放り込んだ。 「おはよ!蒼!風邪大丈夫か?」 「おはよ、うん…平気」 部屋まで譲が迎えに来てくれて一緒に登校する。 昨日は風邪で休んだ事にしていた、心配してくれる譲の優しさに涙が出そうになった。 昨日は学校でこういう事があったとかを話しながら寮を出た。 譲は中学からやっていたサッカー部に入ると意気込んでいた。 爽やかっぽいのが似合いそうだな、俺はヒートが怖いから部活は入らないかな。 他愛もない会話をしていて、そこで薬の事を思い出した。 「そういえば、昨日はありがとうな」 「ん?なにが?」 「荷物、譲が運んでくれたんだろ?」 「荷物?なにそれ?」 つい足を止めると譲も足を止めて首を傾げていた。 「早く行かないと遅刻するよー」という譲の声が遠くに感じられた。 え?譲が知らない?そんな筈はない……そう思うがだんだん自信がなくなる。 じゃあいったい誰が俺の荷物を受け取ったんだ? そういえば管理人は入寮日の時譲の顔と名前を知ってる筈なのに譲だとは言わなかった。 あれ?俺に荷物が届いてるって最初に言った子…あの子は何故俺が立花蒼だって知って… 何だか知ってはいけない事を知ったような気がして、ゾクッと背筋が冷たくなった。 「蒼?」 「…ご、ごめん…変な事言って…何でもない」 俺は深く考えるのは止めようと無理矢理笑い再び歩き出した。 譲は気になるという顔をしていたがそれ以上何も聞かなかった。 門前には入学式の時と同じようにまたΩ生徒達がいた。
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