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「…あ」
「ん…」
ゆっくりと近付くとベンチで横になって寝ている。
普段忙しそうだし、疲れていたんだろうか…外で寝るといくら天気が良くて暖かくても風邪を引きそうだ。
起こさないように空いてるベンチで弁当を食べる事にした。
隣のベンチには規則正しい寝息を立てる響先輩。
たまたま来たところで二人きりになり、なんか変な感じがするな。
あの時出会って会話しなかったら雲の上の存在だったから一生関わらず卒業していたと思うからかな。
響先輩は俺がΩだって知ってるからなんだか楽だった。
気取らなくていいって言うのかな、そんな感じ。
風が暖かくて気持ちがよくて髪を揺らしていた。
食べ終わった弁当をビニール袋に入れて近くにあるゴミ箱に捨てると響先輩に近付く。
寝てて気付いていないだろうけど、今言いたくなった。
これはただの自己満足だし起きてる時に改めて言うからいい、よね。
響先輩の顔を覗き込み、整った美しい顔を前にしてドキリと緊張したが口を開いた。
「ありがとうございます、響先輩」
「どういたしまして」
「!?」
突然声が聞こえてきて驚いて目を丸くして固まる。
響先輩がゆっくりと目を開けて至近距離で目が合う。
あ、響先輩の目ってこんなに至近距離で見た事なかったが綺麗な色だな…赤い。
ってそんな呑気な事を言っている場合ではない!
急いで響先輩と距離を取ると足のバランスを崩してコケた。
俺が転んだ事にも全く動じず上半身を起き上がらせる響先輩を見つめる。
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