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「いっ、いいいつから起きて!?」
「さすがに近くに人がいて気付かないほどの鈍感じゃないからな」
そりゃあそうか、寝ている響先輩にあんな事を言って恥ずかしい。
立ち上がり身体に付いた砂を軽く払い、身なりを整える。
響先輩は俺を不思議そうに見つめて首を傾げていた。
俺の事、変質者だと思われていないだろうか不安だ。
挙動不審で顔を赤くしていたらますます危ない人だと思われると深呼吸で落ち着く。
寝起きで気だるい表情の響先輩を見ないように目を逸らす。
今直視したらヒートしてしまいそうでヤバい状態だった。
「それで、何のお礼だ?」
「…Ωの事誤魔化してくれてありがとうございます」
あのままだったらきっともっと大騒ぎになっていたと思う、俺がΩだと隠しきれなかった…そんな気がした。
響先輩は思い出した様子ですっきりした顔をしていた。
何事にも動じないこの人にバレて運が良かったなと改めて思った。
まだ寝足りないのか響先輩はまたベンチで横になって寝ていた。
これ以上邪魔しちゃ悪いから俺は早々に退散しようと思って歩き出すと俺がいる方とは反対側の方から足音が聞こえた。
何となくそちらを見ると響先輩が寝ているベンチを軽く蹴られたところだった。
ガンッと鈍い音が静かな空間に響き、ベンチが少し軋んだ。
響先輩は睡眠を妨害されたと眉を寄せて睨んだ。
「…睡眠の邪魔するな」
「響だけ逃げようなんて都合良すぎない?」
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