第二話

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ちょっと怒ってる?あの人は生徒会の誰かなのだろうか…身内って言ってたし、でも響先輩は関係なさそうだったな。 「なーに見てんの!」 「うわっ!!」 いきなり肩に腕を回され覗き込まれたから幽霊を見たような反応をしてしまった。 譲は気配を消すのが上手いよな、本当にやめてほしい。 謝る譲を許して再び窓の向こう側を見るが、もう誰もそこにはいなかった。 俺はさっきそこに生徒会長と副会長と金髪の変な格好の人を見たって言ったら何故か譲は微妙な顔をしていた。 どうしたんだ?この前響先輩と副会長を見て憧れの眼差しを向けてたのに… 譲は誰もいなくなった裏庭を眺めてぼそりと呟いた。 「………金髪の変な人?」 「えっ、あ…あぁ」 「風紀委員長じゃないの?それ…」 風紀委員長?一度も見た事がないがあの人がそうなのか? 風紀委員長なのに何故学校指定の制服じゃないんだ? なんか風紀委員長とは思えなかったが実際に見た譲がそう言うならそうなのだろう。 嫌われ者の風紀委員長……見た目が派手なだけで特に何も思わなかった。 譲の話では見た目ではないって言ってたし、風紀委員長が話したところを見ていないからだろう。 譲は深刻な顔で席に座り、俺も譲の向かいの席に座る。 「俺、部活の先輩から変な噂聞いたんだよ」 「……噂?」 「風紀委員長の噂」 本人も口にするのに勇気がいるのか何度も深呼吸していた。 それほどの噂があの風紀委員長にあるのか、もしかしてそれが嫌われるようになった直接の原因なのかもしれない。 Ωならまだしもαがαを嫌うなんてよほどの事だろう。 顔を近付けて譲から内緒話のように小声で聞かされた言葉。 それは俺にとってただの噂であってほしいと願わずにはいられないほど身の毛もよだつものだった。 決して他人事ではない風紀委員長の秘密を知ってしまったような気がした。
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