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プロローグ
「被害者の名前は金森静香。父親の名前は誠造。母親は、二年前に病死しています」
ある部屋の一室に立つ女は、ファイルを片手に持ち、そこに書いてあることをかいつまんで言った。
「ということは、父親が″代表″ということか」
「はい」
女性の前に座っている男は、報告を受ける。机にあるコーヒーを一口飲み、背もたれに体重をかける。
「それで、被告は?」
「容疑を認めておりますが、反省の色がまったくありません。死刑は可決。すでに裁判所から″例の法案″の令状は下りてます」
女は淡々と伝える。
「わかった。それでは、11月1日から執行日前日までの同月30日を期間とし、法案を実行する」
「では、そのように手配します」
女は一度頭を下げ、部屋を出た。
「ふぅ…」
男は、タバコを取りだし火を点ける。ゆっくりと煙を吐きながら、側にあるパソコンを見つめた。
「こちら側で決まったとはいえ、向こう側としては、たまったもんじゃないな…」
パソコンには、一人の男の写真が映っており、名前の下には『並行世界連帯責任法対象者』と記されていた。
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