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「さて、期待には答えられないとは思いますが、金森静香さんを殺したのは、こちらの世界の黒田啓一です。それは間違いないです」 「...」  少し、ほんの少し期待はしていた。もしかしたら、もう一人の自分以外の人間がやったことなのではと、黒田は淡い希望を持っていたが、早めに釘を刺された。 「こちらの黒田は、前科が何件かありましてね。中には奇行も目立っていたようです。何をやっていたかは...まぁ、あなたにとっても聞きたくないことだと思うので言いません」  黒田からすればありがたい配慮だった。自分の姿での異常な行動など想像もしたくない。 「事件の資料は読みましたか?」  福浜は淡々と続ける。 「まぁ、ちょっとは...」  読んでいると気分が悪くなるので黒田はもらった資料を今日の今日まで結局全てに目を通さなかった。 「では、こちらの黒...、もうややこしいので被告って呼びますけど、被告が被害者の部屋に入るために合鍵を使った。というのは?」 「え...」  知らなかった。合鍵?なぜそんなものが。 「被害者と被告に以前から関係があったなんてことは確認されてません。不動産会社に問い合わせたところ、入居の際には鍵を三つ、貸し出しているそうで,現場である被害者の部屋を調べたところ、鍵は普段使われていたものと、予備の合鍵が一つ。その二つしか見つかっていません」 「じゃあ...残りはあいつが...」 「そう、被告が持っていました。奴はそれで侵入したのです」 「で、でもどうして?」  ここで疑問が生まれる。鍵をどうやって入手したのかだ。 「取り調べの段階で合鍵を使っていたのはわかっていたので問い詰めたんですが、そこは頑なに答えませんでしたね。だが拾ったなんて話なわけがない。となると...誰かが鍵を被告に渡したなんて推測が出てくるわけですよ」 「誰かが...」  福浜がここに来たのは報告だと言っていた。 「合鍵は被害者の部屋にあった。普段は使わないんだからそれが外にでることはない」  金森静香のことではなく。 「ならば、それを持ち出すには被害者の部屋に入らなければならない。じゃあ誰が?怪しまれずに出入りできるのは、家族か親友ぐらいです」  その父親のことだと言った。 「あとはそれを、最近被害者の周りをうろついているストーカーに渡す」 「まさか...」  最悪な想像が生まれる。そんな、バカな。 「そう。金森誠造が、金森静香殺しの計画者。我々はそう睨んでいます」  福浜は身を寄せ、そう言った  黒田は思わずうなだれた。ゴンッと一度、仕切り版に黒田の拳がぶつかる音がした後、部屋は静まりかえった。
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